2007年度労働相談活動のまとめ

 

2007930

東京一般労働組合

 

1. 労働相談活動の目的

 私たちの運動は47年前に1人の未組織労働者を仲間にすることからはじまりました。労働相談活動は私たちと未組織労働者とをつなぐ接点であり、私たちの運動・オルグ活動の原点です。

 この活動の目的は未組織労働者を仲間として、東京一般運動の輪を拡げることにあります。具体的には、1981年からとりくんできたパート110番活動=三無追放運動(「無自覚(無知)」「無関心」「無法」状態の克服)の継続と発展です。

 

2. 相談データの集計結果 −集計期間:2006年8月〜2007年7月−

 2007年度は273人の相談者から306件の労働相談を受けました。その属性、相談内容は後掲のグラフ(後日掲載予定)のとおりです。

 

3. 相談の特徴

(1)労働組合のある職場からの相談

国際競争のなかで企業は際限のない収益の追求にあえぎ、職場では生産性を上げることばかりが重要視され、企業内組合では組合員が組合活動にかかわることが薄れてきています。

労働組合のある職場からの相談の特徴は、“職場活動”や“世話役活動”が希薄なために、職場のトラブルがひとりの組合員固有の問題として捉えられていることです。

 

@    労働組合からの相談事例

ア. 学校側より賃金カットの提案をうけている。経営分析、団交戦略について指導してくれるコンサルタントはいないか。

イ. TOBをかけられ投資ファンドの傘下にはいった。組合はあるが労働条件の低下などを阻止するにはどうしたらいいのか。

 

課題

 国際競争のなかで生き残りをかけて闘っている企業の使用者は、企業を守るためと称して人件費削減・抑制に“力”をいれています。つまり、労働者の賃金を下げたいわけです。だから私たち労働者にとって厳しい提案となっています。

 

教訓

 どんな場合にも組合員が何を求めているのか、それに応えていくのが労働組合です。“備えあれば憂いなし”私たちは47年の歩みのなかで400の企業に組合をつくってきた経験と顧問弁護士など専門家をそろえて常日頃からこのような事態に備えています。

 

 

A    労働者の権利が守られていないと感じている労働者からの相談事例

ア.賃金体系変更のためエリア職か総合職かのどちらかを選択しなければならない。転勤したくないものはエリア職となり賃金はいまよりもかなり下がる(勤続6〜10年)。

イ.タイムカードがなく、一度も残業代を支給されたことはない(勤続6〜10年)。

ウ.有給休暇を連続して取得できない。例えば木・金を休んで4連休にしたいと申し出た場合に「認めない」とまでいわれた(勤続1〜3年)。

エ.産休明けの賃金を一方的に減額された(勤続6〜10年)。

 

課題

労働者一人ひとりが自分におきた問題を個人的なこととして、個別に解決したい(あるいはできる)と思って、労働組合に相談しない(あるいは相談できない)ことが要因です。

 

教訓

 上記事例はそれぞれの職場の労働者みんなに共通した問題です。したがって集団的にとりくまなければ解決することは難しいのです。
 労働組合とは人々をひとつにして、そして一人ひとりが強くなる組織です。

『弱ければ何も手にいれることはできない。しかし、強ければ同等に手に入れることができる。』

 

B    労働者一人ひとりのかかえる問題(苦情)を解決してほしい労働者からの相談事例

ア.自分の支店だけ出張手当が支給されない(勤続6〜10年)。

イ.病気休職後に復職した。その1年後、人員削減のため遠くの営業所へ異動することになった(勤続10年以上)。

ウ.店頭接客から外廻りの新規開拓に配転、半年後に「うつ」発症。会社に配転理由を正すも「人事権」をかざすのみ、労働組合に相談をもちかけたら引かれてしまった(勤続10年以上)。

エ.東京支社縮小のため転勤を打診されている(勤続10年以上)。

オ.広告制作の仕事を「させるな」といわれ干されている(勤続10年以上)。

 

課題

 職場によって差別的な待遇をうけている。それは協約や協定・規則が公平に適用されていないということです。

 配転や業務の指揮命令が使用者の専任事項として一方的に行われています。労働者の事情を無視した使用者の“力”で行う業務命令には問題が発生しやすいのです。

 

教訓

 労働組合の役割のひとつ、個々の労働者の不平・不満・苦情などを職場からとり上げ解決する“世話役活動”が重要です。組合員が職場で孤立しないための大切なとりくみです。

 

C    正しい法律や制度を知りたい労働者からの相談事例

ア.  賃金の遅配が続いている。倒産しても賃金を確保する手段はないのか(勤続1〜3年)

イ.  仕事の忙しさによって平日と休日の手当を変化させるのは正当なのか(勤続6〜10年)

ウ.  管理職以上(課長、マネージャーなど)になると年俸制に切り替わり、平日の時間外手当および深夜手当がもらえなくなると聞いている。就業規則に記載されていれば法律上問題ないのか(勤続10年以上)

エ.  退職直前に残業が多いと特定受給資格者になれないのか(勤続6〜10年)

オ.  営業職に廻されてメンタルな障害がでた。退職しようと思うが離職理由を会社都合にできないか(勤続6〜10年)

 

課題

労働者は賃金収入で生活しています。賃金が1か月でも遅配になれば労働者の生活にダメージをうけます。だから賃金を確保できるかどうかは私たち労働者にとって大きな問題です。

労働時間の法規定は、法内残業、法外残業、交替制勤務、宿直・日直、フレックスタイム制、変形労働時間制、36協定と労働者代表など細かく複雑なために本来熟知をすることを求められます。しかし、これは誰にでもできることではありません。

離職する場合に雇用保険の失業給付をすぐにもらえるか、3ヶ月の待機期間をおかれるか、の分別は失業者の生活に大きく影響します。しかし、この制度は給付ルールが複雑でしかも判断基準が明らかにされていないために労働者に大きな不安を与えています。

 

教訓

 労働に関する法律や規則は80種類にもなります。その1つ1つを一人の労働者が学ぼうと思っても限界があります。しかし、問題が発生してから法律をひも解いたのでは間に合いません。

労働者の権利を守るためには一人ひとりの労働者が自分の権利を学習できる活動、そして常に労働法を備えている専従者に気軽に相談できる労働組合の活動が不可欠です。

 

D    職場環境に問題をかかえる労働者からの相談事例

ア.  男尊女卑の会社、愛想が尽きたので退職する。早期退職制を利用するが、この会社が女性にも割増を適用するとは思えない(勤続10年以上)

イ.  派遣会社に正社員として就職したが、どこへ行くのかも明らかにされず強圧的に押さえつけられる(勤続1か月未満〜3か月)

 

課題

労働者としての基本的な権利が認められていない職場で労働者が孤立させられることが問題です。

 

教訓

 労働者は奴隷でも封建制度の従者でもありません。労働者は人間として自由です。労働者は自分の権利・義務を理解した上で働けばいいわけです。それ以外の抑圧をうける必要はありません。

しかし、使用者によっては労働者を自分のモノ(私物)と勘違いしている人もいます。これを防ぐには労働組合が職場を民主的に運営できるように障害をとり除く活動をしなければなりません。

 

(2)労働組合にはいっていない労働者からの相談

相談の特徴の1つは、職場に労働組合のない企業では労働条件の決定に労働者がかかわっていない、つまり使用者の都合で一方的に労働者の労働条件が決められていることにあります。

2つには、職場では生身の労働者がモノもいえずに使い捨てにされる、あるいは低賃金、長時間労働に苦しんでいることです。

 

@    大企業・正社員からの相談事例

ア. 親会社からの出向者と労働条件が違う。組合を作って交渉したい(勤続1〜3年)。

イ. 1年に1000円ずつしか賃上げがない。最近採用された人の賃金が自分の賃金より高くなっている。交渉したい(勤続4〜5年)。

ウ. 突然、雇用を4年限りとするという契約書に同意するように求められた(勤続10年以上)。

エ. 賃金が毎年首を絞められるように下げられている。生活できなくなり、転職せざるを得ないようにさせられている(勤続4〜5年)。

オ. 前の上司のパワハラで体調を崩している。上司が変わって安心していたら退職勧奨された(勤続10年以上)。

 

課題

 使用者が賃金などの労働条件を自分たちの都合に合わせて恣意的に扱える環境が公然化していることが問題です。

 労働者は交渉窓口(労働組合)をもたないために、問題がおこるとまず交渉窓口を探すところからはじめなければなりません。

 また、交渉したい場合は、会社という組織を相手に労働者一人ひとりが交渉を行うか、あるいは労働組合を“一”から作るか、個人加盟の労働組合に加入して交渉する以外には方法がありません。

 

教訓

企業別労働組合を作る場合には複数の労働者の同意の下に結成することができることになっています。しかし、仲間をつくれず一人で立ち上がりたいという場合には不可能です。そこで一人でもはいれる労働組合というのが労働者の救済には必要なのです。それ以外ないのです。

大切なことは、個人交渉の応諾義務は会社にはない、と拒否されればそれまで。しかし、一人でも加入できる労働組合の団体交渉については労働組合法で保護されているから使用者は拒否することはできない、ということです。

 

A    規模100人未満の中小企業・正社員からの相談事例

ア. ワンマン経営で一時金なし、昇給なしが続いている。会社と交渉したい(勤続45年)。

イ. 急に「契約社員にする」と通告されたが了承していない。それでも通用してしまうのか(勤続610年)。

ウ. 3か月働いたが賃金を1円も払ってもらえない(勤続3か月)。

エ. 遅刻すると遅刻分を控除された上で3回で1日分賃金カットされる(勤続7か月〜1年未満)。

オ. 周知されていない労働者代表による36協定は有効か(勤続610年)。

カ. 長時間労働、休日出勤の連続だが、年収は300万円に届かない(勤続13年)。

キ. 毎日11時から24時まで勤務、公休もとれない。退職を申し出たら賃金を払わないと脅された(勤続1か月未満〜3か月)。

ク. 妻がインフルエンザで倒れたので休みをもらおうとしたら「明日から来なくていい」といわれた(勤続10年以上)。

ケ. 就業規則を求めたり、労働基準監督署に行ったりしたら、社長から解雇するといわれている(勤続13年)。

コ. 仕事を一方的に変更され賃金をカットされた。連日嫌がらせをうけ退職を強要されている(勤続610年)。

サ. 20人社員がいるが社会保険などに未加入、どうしたら加入させられるか(勤続7か月〜1年未満)。

シ. 勤めて3年になるが健康診断がない。他の従業員に聞いてもあまり荒立てないほうがいいといわれた(勤続13年)。

 

課題

使用者に労働法を守る姿勢がないことが一番の問題です。さらに、使用者の立場の優位性から“力”で労働者を抑えつけ従わせようとする態度にも問題があります。

 また、職場の労働者がひ弱なために泣き寝入りすることも職場を改善できない大きな要因になっています。

 

教訓

 私たちの47年の活動経験からいえることは、使用者が労働法を知らないためにこのような問題がおこることがほとんどだということです。だからこそ日頃から団体交渉を通じて正しい労働関係法を使用者に知らせる活動が大切なのです。

 

B    パート労働者からの相談事例

ア. 雇用契約書のなかに休業補償と有給休暇がないので申し出たら「会社がまわらない」と拒否された(勤続13年、製造業、規模不明)。

イ. 会社は正規雇用をまぬがれるために、パート労働者の労働時間を短縮し、時給はそのままなので収入減少。パート全員で交渉したい(勤続13年、業種不明、規模300人以上)。

ウ. 店の改装のために半分解雇、半分は新しい店で再雇用となった。採用基準は好き嫌いできめられているようだ。裁判で争いたい(勤続45年、飲食店、規模300人以上、女性)。

エ. 新任の上司と合わず勤務時間を大幅に減らされるなど嫌がらせをうけている(勤続13年、サービス業、規模不明、女性)。

 

課題

使用者の“力”が強い職場においてパート労働者が個人の力で労働条件を正すことは難しいのです。結果として雇用を失うことになり、再びつぎの就職先を探さなければならなくなります。

最近は母子家庭や男性パート労働者の増加により、パート労働者であっても家計の主な担い手である場合が多くなっています。だから労働時間を一方的に減らされると家計に大きなダメージをうけます。

 

教訓

 パート労働者など非正社員は雇用労働者の3分の1にまで増加し、正社員の労働条件にも大きな影響を及ぼしています。

 交渉から非正社員を排除してはならないのです。一緒に腕を組んで立つことが労働者の権利を守ることになります。

『団結すれば強いがバラバラでは弱い。』

 

C    派遣労働者からの相談事例

ア. 仕事を別の派遣会社の派遣労働者に移行され、仕事がない状況。契約をきられるのではないか(勤続1年、医療業、規模300人以上)。

イ. 派遣料金と賃金にかなり差がある。賃上げを求められるか(勤続610年、業種不明、規模不明)。

ウ. 3か月契約で派遣されたが当初の話になかった15時間勤務を強制されている(勤続1か月未満〜3か月、情報処理・IT業、規模300人以上、女性)。

エ. 契約期間内に退職勧奨を受けた。拒否できないか(勤続7か月〜1年未満、サービス業、規模3099人、男性)。

オ. 派遣先が合わないので辞めたいが辞めさせてくれない(勤続〜3か月、情報処理・IT業、規模不明、女性)。

カ. 労災で通院している。賃金は保障されるのか(勤続〜3か月、サービス業、規模10人未満、女性)。

キ. 派遣先から業務外の仕事をさせられている。派遣元に賃金交渉をしたところ時給が上がるどころかつぎの契約更新はないといわれた。(勤続7か月〜1年未満、金融保険業、規模300人以上、女性)

 

課題

 派遣先・派遣元が派遣法の規定を守っていないために派遣労働者は職場で多くの見えない障害物をかかえています。

 

教訓

 東京一般は働く者ならだれでもはいれる労働組合です。

 労働組合はすべての労働者のためにあるのです。自由がほしいから派遣で働くという人にも開かれています。大切なのは一人ひとりの労働者が自分の権利を理解したうえで働くということです。そして、労働者が何をもとめているのか、それに応えていく労働組合であることです。

 

 

4.まとめ

中小企業の正社員およびパート労働者・派遣労働者など非正社員のほとんどは、労働者保護法も適用されないような職場で働いています。そのような労働者を社会で孤立させないために私たちは1981年からパート110番運動にとりくんできました。

労働組合にはいっていない労働者が仲間になるのを待つのではなく、こちらから働きかけることで東京一般運動の輪を拡げ、労働者の基本的権利を求めていきます。

以上